頑張っても報われないスクラムマスターへ

約4年前
斎藤 紀彦
アジャイルコーチ
斎藤 紀彦

こんにちは、アジャイルコーチの斎藤です。

今回から、スクラムを始めたけれどなかなかうまくいかない、というスクラムマスターのために、これまでのスクラムマスターやアジャイルコーチとしての支援経験からのワンポイントアドバイスを書いていきたいと思います。

さて、スクラムマスターの重要な役割の一つに、自己組織的なチームにする、ということがあります。

しかし、経験上、スクラムマスターが頑張れば頑張るほど、指示待ち人間で構成された活気がないチームになってしまう現場が多いのが現実。 今回は、そうした頑張ってもなかなか結果が出ないスクラムマスターが陥りがちな4つのパターンと、タイプごとのワンポイントアドバイスをお伝えします。

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管理職タイプ

陥りがちなアンチパターン

  • チームメンバーに指示する
  • チームメンバーに代わって見積や計画する
  • チームの目標を設定する

アドバイス

「スクラムの目的はプロジェクトの達成だけではありません」

チームリーダーやマネージャー出身のスクラムマスターが陥りがちなパターンです。こうしたスクラムマスターには、なぜスクラムにおいてチームの自己組織化が重要かということをお伝えします。たとえば、マネージャーの指示でプロジェクトが達成できても、それはチームが優れているからではなく、マネージャーが優れているからです。そうしたチームはいつまでもマネージャーに依存し、自主性は低く、パフォーマンスが安定しません。あなたが目指すのはそんなチームでしょうか?
もしも自己組織的なチームを目指すのならば、まずはチームメンバーへの指示や計画を控えましょう。

過保護タイプ

陥りがちなアンチパターン

  • チームの問題の解決策を、まっさきに提示する
  • チームの問題を自分一人で解決しようとする
  • 困難なバックログを担当する

アドバイス

「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」

ベテラン出身や優しい人柄を買われてなったスクラムマスターが陥りがちなタイプです。こうしたスクラムマスターは良かれと思い、チームの問題を解決し、困難なバックログを担当します。しかし、それは裏を返せばチームから成長の機会を奪うことに他なりません。
もちろん、チームの問題が解決されていることを保証するのはスクラムマスターです。が、実際に障害を取り除くのは誰でも構いません!
チームに問題をさりげなく伝えても、実際の解決はできる限りチームに任せてしまいましょう。

放任主義タイプ

陥りがちなアンチパターン

  • スクラムイベントで何もしない
  • チームの状態を観察しない
  • チームが不健全な状態に気づいても何もしない

アドバイス

「綺麗な花を咲かせるには、土壌整備が必要です」

上記の管理職タイプや過保護タイプがチームの自己組織化を目指そうと努力するものの、何をしていいかわからなくなった結果、放任主義タイプに陥ります。スクラム導入時のチームメンバーの多くは自ら判断し、自ら計画することに慣れていません。その状態で、チームメンバーの自主性に期待しイベントをただ傍観しているのは明らかに問題です。指示や問題解決をしないでと言いましたが、それは何もしなくてよいという意味ではありません。
チームという大輪の花を咲かせるためには、見える化、場づくり、ファシリテーションなどでチームメンバーが自由に発言しやすい土壌を念入りに整えましょう。

溺愛タイプ(スクラム上級者向け)

陥りがちなアンチパターン

  • チームが十分に成長しても、チームに残り続ける
  • 自分のチームさえうまくいけば、他のチームはどうなっても良いと思っている
  • 自分のチームを守りたいあまりに、組織やマネージャーを敵視する

アドバイス

「組織を変えるのもスクラムマスターの仕事です」

最後に、優秀なスクラムマスターが陥りがちなタイプです。スクラムマスターに対するよくある誤解は、スクラムマスターはチームのみを担当する、ということです。しかし、スクラムガイド を読めば、チームだけではなく組織にスクラムを導入することもスクラムマスターの役割なのだと分かります。
十分にチームが成長したのを見届けたら、たとえば他のチーム、ビジネス部門、経営者といったさらなる関係者を巻き込む準備を始めましょう。

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【参考】Scrum Master focus

まとめ

今回は、自己組織的なチームにしようと頑張ってもうまくいかないスクラムマスターに対するアドバイスを語ってきました。私は、スクラムマスターが頑張れば頑張るほどチームが疲弊していく大元には、スクラムマスターがプロジェクトやプロダクトの成功を焦るばかりに、自己組織的なチーム作りをおろそかにすることにあると感じています。しかし、Regional Scrum Gathering Tokyo 2020でJim Coplien氏が語っていたように、スクラムとは、プロダクトを構築するためだけではなく、プロダクトを構築するチームを生み出すためのものでもあるのです。

今回は以上です、悩めるスクラムマスターにとって何かしらの参考になれば幸いです。
次回もお楽しみに!

【参考】The Ten Bulls of the Scrum Patterns

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