アジャイルコーチがフィードバックで注意している5つのポイント

3か月前
斎藤 紀彦
アジャイルコーチ
斎藤 紀彦

unsafe:

前回のブログでは、 アジャイルコーチがティーチングで注意している5つのポイント として、普段ティーチングで心掛けているポイントを整理してお伝えしました。
今回は第二弾として、普段フィードバックで心掛けていることをお伝えします。

feedback-gc9c8de80c_1920.png

1. 評価や印象を伝える時は、事実とセットで

たとえば、「あなたは話を聞かなすぎる、もう少し話を聞きましょう」というフィードバック。
「話を聞かなすぎる」とは具体的にどのようなことでしょう?
考えてみると、そこに明確な定義や基準はありません。事実ではなく送り手の評価や印象であると気がつきます。
さらに、「もう少し話を聞きましょう」という助言も抽象的で、受け手は具体的にどうすれば良いかわかりません。
このようなフィードバックは、受け手にとって役に立たないばかりか、困惑や怒りを招くこともあるでしょう。

そこで、以下のように、評価や印象を伝える時は、具体的な事実を一緒に伝えしましょう。
今日のミーティング中、メンバーの話を3回遮りましたね。次回からは最後まで聞いてから話すと良いですね

そのための第一歩は、事実とあなたの評価や印象を区別することです。

事実と評価や印象の区別について

事実と評価や印象の区別は、言うほど容易ではありません。
そこで私は事実と評価や印象を分けるために、「ビデオカメラに映るものを事実、映らないものを評価や印象」という一つの基準を使っています。
たとえば、「時間にルーズな田中さん」はビデオカメラに映らないため評価、「今週田中さんはデイリースクラムに2回遅刻した」はビデオカメラに映るため事実としています。

2. フィードバックに対する相手のニーズを確認する

ただ一方的にフィードバックをするのではなく、メンバーにどんなフィードバックを得たいかを確認すると、チームの自律性を高めることにつながります。
そこで、私はコーチングに入る前に、出来るだけチームメンバーに以下を確認します。

  • フィードバックしてほしいポイント:○○/✗✗等
  • フィードバックの手段:口頭/テキスト等
  • フィードバックのタイミング:随時/ミーティング終了時等

この確認により、上記に加えて下記の効果も期待できます。

  • コーチとチームの関係性をフラットにできる
  • フィードバックを受け取ることへの苦手意識を和らげる
  • ピントのずれたフィードバックでなく、チームの望むフィードバックができる

また、フィードバックを与えるだけではなく、コーチ側もチームメンバーからフィードバックを受け取りましょう。
私は、飲み会でさりげなくメンバーに自分へのフィードバックをよくお願いしています。

3. フィードバック内容を4つまでに絞る

フィードバックしたい内容が沢山浮かび、あれもこれもお伝えしたくなる時があります。
しかし、それは逆効果です。
ミズーリ大学の心理学教授ネルソン・コーワン氏の実験によれば、人が短い記憶で記憶できる情報のかたまり(チャンク)数は4±1とのこと。
たくさんのフィードバックをお伝えしても、受け手は圧倒されるか、そもそも覚えていられません。
そこで、フィードバック内容を、最大4つ程度に絞りましょう。
私がやっていることは以下の通りです。

  • フィードバック内容をプロダクトバックログのように優先順位付けし、上位1、2個を口頭でフィードバックする
  • 口頭で伝えられなかったフィードバックを、後からテキストチャットで送る

4. ポジティブな所にフォーカスする

スクラムの経験が浅いチームに接する際、あるべき姿とかけ離れているのが気にかかり、多くのネガティブなフィードバックをしたことがあります。
そのせいで場の雰囲気を険悪にし、メンバーの自己肯定感を削ぎ、スクラムやコーチに対する反発を強めてしまいました。

私はそこで、どんな状況であれ、ネガティブフィードバックで埋め尽くしてはならないと身をもって学びます。

その後は決死の挽回を図り、ポジティブな側面だけに注目し、そこを指摘するようなフィードバックを心がけました。
すると、またたく間にメンバーは成長していき胸をなでおろしました。

ネガティブな内容は極力避けて、ポジティブなフィードバックを心がけるのは想像以上に大切です。

ポジティブなフィードバックのTips

1. 「しようとしたこと」に注目する

なかなか結果が出せないチームにポジティブなフィードバックを与えるのは難しいと思うかもしれません。
そのような場合、「うまくいったこと」(結果)ではなく、「しようとしたこと」(過程)に注目しましょう。
そうすると、メンバーが前進のために試している多くのことに気づきます。 小さなことでも「しようとしたこと」を拾いあつめると、ポジティブフィードバックができるようになります。
※ブログでも度々登場するHYCの吉田さんから教わったプラクティスです。

2. ネガティブな内容はポジティブなフィードバックとセットで!

どうしてもネガティブな内容をフィードバックしなくてはならないときはどうしたら良いでしょう?

私は、以下のようにポジティブな内容とセットで伝えるようにしています。

「ミーティングのゴールを確認したところは素敵です。次はタイムボックスを意識できればさらに良いですね」

5. グロース・マインドセットを手放さない

4でポジティブフィードバックが大事だと紹介しましたが、当然、伝え方のテクニックを駆使するだけでは相手に口先だけだと見破られてしまいます。

フィードバックで何より重要なのは、手法ではなくマインドセットです。
アジャイルの支援では、フィードバックの前提として「相手の成長を促したい」と常に強く意識するようにしましょう。

スタンフォード大学の心理学者のキャロル・ドゥエック博士が「グロース・マインドセット」として提唱していますが、「人の基本的性質は、ほとんどが経験と努力次第で伸ばすことができる」という説があります。

どのようなチームメンバーに対しても、たとえメンバー自身が諦めていても、支援者はメンバーの可能性を信じ、グロース・マインドセットを持ち続けることが重要です。

参考文献

  • キャロル・S・ドゥエック(2016). マインドセット「やればできる! 」の研究 草思社
  • タムラ・チャンドラー, L・グレーリッシュ他(2021). フィードバックの真価 ~職場に信頼を生み出し、共に成長する ヒューマンバリュー

おわりに

今回はアジャイルコーチではとても重要なフィードバックについて、経験を元に有効だったプラクティスをまとめました。
次回も、このような形で経験がシェアできればと思います。
是非、皆さんのフィードバックの方法もシェアしてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。

"15kgのダイエットから学んだカイゼンの極意"スライドを公開しました大成建設様の事例を公開しました
SHARE