レポート:パネルディスカッション-大成建設:8000社/9万人が利用する業務システム群における開発サイクルについて

30分前
中の人
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2024年11月に、エンタープライズアジャイル勉強会にて
『大成建設:8000社/9万人が利用する業務システム群における開発サイクルについて』 がオンラインで開催されました。
本記事では、その資料とパネルディスカッションの詳細をご紹介します。

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登壇者:
 大成建設 情報企画部 ICTソリューション室 課長代理 台 裕己様(写真中央)
 Graat マネージャー 平山 拓央(写真右)

モデレーター:
 Graat 代表取締役社長 鈴木 雄介


大成建設が取り組んだ業務システムのアジャイル的アプローチ

大成建設では、業務システムのデータ管理を効率化するために「X-grab」という データ管理プラットフォームを導入しました。
このプラットフォームを活用していく中で、開発の進め方や優先順位付けが課題となり、 Graatの提供するエンタープライズアジャイル領域の組織プロセス設計コンサルティングを 利用した「X-grab協議会」が設置されました。

「X-grab協議会」には、開発の透明性向上、部門間の連携強化、 開発のスピードアップを図るための仕組みがあります。
現在は X-grab協議会の導入によって、各部門の要望を整理して優先順位が明確になり、 開発の進行はよりスムーズになりました。 また、開発ベンダーとの連携も強化され、開発プロセス全体の効率化を実現しています。

パネルディスカッション

X-grab導入で開発の基盤を整備

鈴木: X-grabについて簡単にご説明いただけますか?

台: X-grabは、大成建設の業務システムを支えるデータ管理基盤です。
建築業務における図面、工事スケジュール、品質データ、テスト結果などの膨大な情報を 一元管理する役割を担っています。導入によって、開発期間の短縮やコスト削減が実現しました。
また、システムごとに異なっていたデータの管理方法が統一され、社内の情報共有がスムーズになった点も大きな成果です。

X-grab協議会の導入で開発の意思決定プロセスを最適化

鈴木: X-grabを導入した後、さらなる改善が必要になった点は何でしょうか?

台: X-grabによってデータ管理の基盤は整いましたが、開発案件が個別に発生し、 統制が取れない状態が続いていました。そのため、開発の優先順位を適切に決める仕組みが必要でした。

鈴木: それがX-grab協議会の設立につながったのですね?

台: はい。2024年7月にX-grab協議会を設置し、各本部の代表が集まって四半期ごとに 開発の優先順位を決定するようになりました。これにより、案件の選定基準が明確化され、 開発の無駄が削減されています。さらに、部門横断的なプロジェクトが推進しやすくなり、 情報共有の仕組みも強化されました。

X-grab協議会により開発の優先順位付けが明確化

鈴木: 協議会を導入したことで、具体的にどのような効果がありましたか?

台: まず、開発の優先順位がつけやすくなりました。 以前は各部門が独自に開発案件を進めており、全体の整合性が取りづらかったのですが、 協議会を通じて四半期単位で全社的な観点から優先順位を決められるようになりました。
また、各部門の意見が事前に共有されることで、開発の方向性が明確になり、意思決定のスピードも向上しています。

平山: 業務部門間の調整もスムーズになりました。 エントリーシートの質が向上し、要件定義の段階で課題を整理しやすくなったことで、 開発の流れがより効率的になりました。
さらに、開発の初期段階で関係者間の認識を統一できるようになり、 開発中の手戻りが減少した点も大きなメリットです。

鈴木: 『アジャイル』という言葉を意図的に使わなかったと聞きましたが?

台: 社内に誤解を与えないよう、あえて『定期的なプロセス』として説明しました。 結果として、自然な形でアジャイルが導入されています。 定期的な開発サイクルの中で継続的に改善を行うことで、開発の品質とスピードの両立を実現できています。

今後の課題は開発案件の調整とデータ活用の促進

鈴木: 今後の課題について、どのようにお考えですか?

台: まずは開発案件の調整負荷の軽減ですね。
現在は3ヶ月ごとに10案件ほどを進めていますが、案件の調整に時間がかかるので、 フォーマットを整備し、調整工数を削減する工夫を進めています。また、各部門との調整をさらに効率化し、開発チームの負担を減らすことが重要と考えています。

平山: もう一つの課題は、データ活用の促進です。
現在はデータの蓄積フェーズですが、今後は利活用のフェーズへ移行し、 新たな業務改善につなげていきたいです。 例えば、データ分析を活用して 建築プロジェクトのリスクを事前に把握する仕組みを構築することで、 より効果的な意思決定が可能になると考えています。

まとめ:X-grab協議会の導入で開発をスムーズに推進

X-grab協議会の導入により、大成建設では開発のスピードと透明性が向上しました。データ管理基盤としてのX-grabの利便性を最大化しつつ、協議会の設置により開発案件の調整を最適化しています。

今後は、開発案件の調整負荷を軽減しつつ、データ活用の促進を図り、 より円滑な開発プロセスの確立を目指していきます。
また、アジャイル的な開発アプローチを継続的に取り入れ、 より柔軟で迅速なシステム開発を実現するための取り組みを強化していく予定です。

 


パネルディスカッションでは参加者からの質問も多く、 X-grab協議会のプロセスや、大成建設様の社内でアジャイルをどのように扱っているか等が解説されていました。
また、「仕組み自体が綺麗というだけでなく、これを維持しようという努力をすること、周りからもこの仕組みを尊重していただいていることが、本当に良い結果に繋がっているのだと思います」というコメントで締めくくられました。

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