アジャイルを組織の中で機能させる
アジャイルプロセスは、システム開発手法のみならず組織全体を変革する力を秘めています。 Graatの組織アジャイル化支援では、チームプロセス支援のアジャイルコーチングと、組織プロセス支援の各種ワークショップ、コンサルティングを組み合わせて、お客様の組織のアジャイル化を推進します。
"豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献すること"を企業理念として掲げ、日本の電気通信インフラを支え続けている同社。事例紹介にご登場いただくau PAY アプリは、同社が2019年4月から提供するauユーザー以外でも利用できるコード決済サービス。QRスマホ決済やチャージはもちろん、生活に密着したさまざまなサービスと連携しながらリニューアルを重ねスーパーアプリへと成長しているプロダクトです。
この記事で紹介するアダプティブリーダーシップ・ワークショップは、GraatとHyper-collaborationとの提携プログラムです。
藤木(KDDI):au PAY アプリは、KDDIが提供するスマートフォン/タブレット用アプリです。QRコード、バーコードなどを使った「コード支払い」や、プリペイドカード、クレジットカードをより便利に使いこなすためのさまざまな機能があり、非常に多くのお客様に「日常の接点」としてご利用いただいています。開発に取り組むチームも、いまでは7つのサブチームを抱える大所帯になっています。
北脇(KDDI):僕たちのチームは2018年にスクラムを採用し、試行錯誤を重ねて来ました。スクラムでは「なんで?」がすごく大事だと思います。スクラムガイドで決められている約束ごとも、メンバーが「なぜやるのか」に腹落ちしていないと、うまく回らない。一人ひとりが腹落ちし、チームで共感し「こうやらないと駄目だ」がピッタリ合うと、パフォーマンスが出せるところが、不思議だしおもしろいと思っています。
藤木:我々が、いま、力を入れているのは「社内アジャイルコーチの育成」です。自分たちのチームがスクラムを実践して成果を出すだけでなく、組織の中にアジャイル開発のメリットを伝え、他のチームが取り組む手助けをできるような人材を育てようとトライしています。 この取り組みに限らず、ものごとを進める上で一番難しいのは「合意形成」です。社内コーチを育成する上でも、そこが一番の課題だと思っています。
北脇:スクラムを始めた頃と比較とすると、チームはいろいろな点で変わったと実感しています。じゃあ、何を変えたのか?と考えてみると、「画期的なツールを導入して・・」といった話ではありませんでした。考え方を変えた、大事なことに気づけた、そういうことが広まって今があるのだと思います。何がきっかけになってそういうマインドチェンジが起きるのか?そこを知りたいという気持ちがありました。
藤木: アダプティブリーダーシップという考え方は、我々が取り組んでいる「社内アジャイルコーチ」育成の文脈にマッチすると思い、今回のワークショップ実施を決めました。
北脇:僕は「ステークホルダーマップ」が印象に残っています。チームと関係者が複雑に入り組んだマップができあがると、すでに知っている情報であっても、「本当に複雑な環境の中でやっているんだ」と、改めて実感させられました。
「ペインスケール」も興味深かったです。日常業務で起こりがちな「嫌なこと」をいくつか取り上げ、それがどのくらい嫌なのかを4段階で評価するというワークでしたが、メンバーそれぞれに重視するポイントが違っていて、おもしろいと思いました。
柴田:今回の研修は、アジャイルやスクラムに限らずどんな仕事にも、もっと言えば、仕事だけでなく家庭でも、たとえばお小遣いの値上げ交渉にも(笑)使えるのかな、という期待がありました。 実際のワークショップでは、「クラウド」という思考ツールを使ったワークが難しかったです。一人ではなく、グループで取り組むワークだったことがポイントではないかと思います。どこが問題の本質なのかという捉え方や、こういう言い回しがしっくり来るというニュアンスなどが人によって少しずつ違っていて、いろいろな考え方があるんだなと思いました。
北脇: 自分自身の仕事への取り組み方に関する気づきがありました。僕には「仕事だから、やる」というある種の割り切りがあったのだと思います。「仕事だからやる」自体は悪いことではないと思いますが、もっと長い目で見ると、本当に目指すところ、プロダクトを良くするために解決すべきことに向き合えていない、とどこかでわかっていた。「でも、仕事ってそういうものなんだ」というふうに、自分の気持を持っていっていた。その方が楽だったのだと思います。 このワークショップはそこにちゃんと向き合って解決して行こう、ということに気づく機会になったなと思います。
柴田:私は、相対する人の感情面を意識するようになりました。 私の仕事は、人に何かをお願いすることが多いのですが、依頼される側がどう捉えているんだろう、ということは、以前よりも考えるようになったと思いますね。自分の主張をいったん保留して相手の感情に意識を向けるよう心がけると、納得して取り組んでもらえることも増えました。また、うまく行かなかったときでも「自分のこういうところがまずかったのかな」という気づきにつなげることができるようになりました。
藤木: 今回のワークショップがきっかけになって、チームメンバーの意見を聞いてみる機会が増えたのですが、本当に一人ひとり、考えや思いは違っていて、そのことに改めて驚かされます。たとえば、リモートワークで働くメンバーどうしのコミュニケーションひとつをとっても、「互いの顔や人となりを知っていると仕事がやりやすい」という人もいれば、「仕事以外の接点はない方が進めやすい」という人もいます。こちらの問いかけに、想像を超えるような答えが返ってくることもあり、人の多様性を実感しています。 こうしたことに目を向けるようになったのも、今回のワークショップがあったからだと思います。
北脇:いま、我々がおかれているビジネス環境は、相手の求めていること、自分が期待されていること、アウトプットイメージなどの認識合わせを高速にやって行かなければならない世界です。「厳密な計画と文書を作り、決まった通りにものを作る」という世界は、もうないのだと思います。 アダプティブリーダーシップ・ワークショップで取り扱うスキルやマインドは、同様の環境におかれている人や、アジャイル開発に携わる人なら、だれもが意識すべきものだと思いますし、今後も継続的に取り組んで行きたいです。 また、メンバー間の認識を合わせるための基準となる「目指すところ、自分たちは何のためにこの仕事をしているのか」について話せるような研修も考えて行きたいと思います。 レンガ職人の寓話にもあるように、どうしても日々の仕事に追われて「自分の仕事はレンガを積むこと」となりがちです。でも、単にレンガを積むのではなく「皆が集まれる聖堂を建てているのだ」という意識と「自分はそこを目指したい」という思いを共有できるチームを目指したい。いますぐではないかもしれませんが、メンバー全員が「そこを目指したい」に気づけるタイミングで研修を実施できたら理想的だと思います。
この記事は、Hyper-collaboration社サイトに掲載されている「事例紹介:KDDI様ロングインタビュー「アダプティブリーダーシップ・ワークショップ」体験記」のダイジェスト版です。この記事では紹介しきれなかったエピソードや詳しいお話が読める「ロングインタビュー」もぜひチェックしてみてください。
アジャイルプロセスは、システム開発手法のみならず組織全体を変革する力を秘めています。 Graatの組織アジャイル化支援では、チームプロセス支援のアジャイルコーチングと、組織プロセス支援の各種ワークショップ、コンサルティングを組み合わせて、お客様の組織のアジャイル化を推進します。
組織レベルのDXにチャレンジする際には、従来の組織運営ルールや価値規範と「アジャイル的な価値観」を上手にすり合わせ、新たな企業文化を作り出すことが重要です。 Graatの組織プロセス支援は、チームや部門を超えた協業に求められるコンピテンシーの開発を通して、お客様自身の組織変革能力を育てます。