KDDI株式会社 パーソナル事業統括本部 システム開発本部 アジャイル開発部KDDI株式会社 パーソナル事業統括本部 システム開発本部 アジャイル開発部
事例紹介

au PAY開発を支える、EBAADによるAIエージェント活用

KDDI株式会社 パーソナル事業統括本部 システム開発本部 アジャイル開発部 副部長 藤木 潤 様(写真中央右)
KDDI株式会社 パーソナル事業統括本部 システム開発本部 アジャイル開発部 アプリケーション2G 本橋 幸治 様(写真中央左)
KDDI株式会社 パーソナル事業統括本部 システム開発本部 アジャイル開発部 アプリケーション2G 打田 将吾 様(写真左)
Graat代表取締役社長 鈴木雄介(写真右・インタビュアー)
KDDI株式会社https://www.kddi.com/

KDDI株式会社は「豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献します」という企業理念のもと、通信を中心に暮らしやビジネスを支える幅広いサービスを展開する総合企業です。中でも au PAY は、決済・ポイント・金融サービスをつなぐ存在として、KDDIの強みを日常生活の中で身近に感じられる重要なサービスです。

KDDI株式会社(以下、KDDI)のau PAYサービス開発チームは、GraatのAIエージェントデザインサービス「EBAAD(エバード)」を活用し、AIエージェントシステムを構築しました。
EBAADは、システム開発に限らず、業務の知見や型をAIエージェントとして設計するための方法論です。
今回はその一例として、au PAYサービス開発チームにおけるバックログ作成支援ツールの取り組みを紹介します。

AIが導入され、個人の効率化だけでは語れない、チームと組織の変化について、
KDDIの藤木様・打田様・本橋様と、Graat代表の鈴木が、その過程と気づきについて語り合いました。

プロジェクトの背景 ── AI活用の3年間と「バックログ」への着目

まず、今回のプロジェクトが生まれた背景から教えてください。
KDDI 藤木様

藤木(KDDI) 内製アジャイル開発へのAI活用は、2023年から取り組んでいます。最初はコードのサジェスト程度でしたが、エージェント技術が進化し、MCP連携や長時間の自律的処理が可能になると、できることの幅が一気に広がりました。そうした変化の中で、さらにAI駆動開発を推進するためには何をすべきか改めて検討しよう、ということから始まっています。

本橋(KDDI) まずはGraatさんと一緒に開発プロセス全体の流れを整理しました。その上で、AIの適用箇所を検討していく中で「企画から開発の流れを改善できないか」というアイデアが生まれました。具体的には「バックログ(要件チケット)の精度が低いまま後工程に流れてしまうことが、設計・実装・テスト全体の品質を下げている」という課題です。入口が良くなれば、後段のすべてもよくなる、と考えました。

最初の戸惑い ── 「要件定義の支援」の背景にある意図

EBAADを通じて「バックログ作成を支援するエージェントを作る」中で、チームの状況はいかがでしたか?

藤木(KDDI): 正直なところ、最初は手探りでした。「AIを使って要件整理を効率化する」という目標はあるものの、当然、「AIが要件を決めてくれる」わけではありません。むしろ、企画や要件を整理する担当者が、ちゃんと要件を考えられるための仕組みが必要です。概念としては理解できましたが、具体的にどういうことなのかは、作ってみて、使ってみるまでピンとこなかったことも多いです。

打田(KDDI) 最初は「バックログを書くのが楽になれば」と思っていましたが、そこまでシンプルではなかったです。今回、構築したAIエージェントは、対象とするシステムや要件の種別に応じてバックログの文章を生成してくれます。ただ、そのためには、人が「なぜやるか」「なにを実現したいのか」を言語化しなくてはなりません。「ちゃんと考えれば、ちゃんとしたバックログが生成される」ということが「楽だけど、大変だな」という感覚です。

Graat 鈴木

鈴木(Graat) そうですね、EBAADは「AIによって、人間が考えを深める」ことを重視したAIエージェントの設計方法論です。
今回は要件定義に対して適用したので「ユーザーの提示した要件のアイデアが合理的か」とか「生成されたバックログはエンジニアや事業部門から見ても適切か」というようなことをチェックしてくれます。
そのために一般的な「要件を整理するために必要な枠組み」を下地にしながら、au PAYに固有のノウハウや判断軸を組み込んで作られています。
その結果、AIエージェントを使う中で要件の「なぜ、なにを作る」というのを自然と考えられるようになります。
こうすれば、要件定義に不慣れな人でも、きちんと要件を検討し、整理できるようになります。

使いながら見えてきた価値 ── 「大変になった」からこそ、チームが育つ

実際に試行錯誤し続ける中で、どんな変化や気づきがありましたか?

打田(KDDI) 最初の「大変さ」を越えると、見えてくるものがありました。自分自身でバックログを書いていても、もちろん自分の知識の範囲内でしか書けません。でも今回のAIエージェントを使うと「自分が気づいていなかった観点」も出してくれる。たとえば画面仕様を考えるとき、自分が詳しくないUX/UIなどの領域でも、世の中のノウハウや、チームで蓄積してきたノウハウに沿った支援をしてくれます。自分一人の作業では出せなかったものが出てくる体験が、だんだん当たり前になっていきました。

KDDI 本橋様

本橋(KDDI) AIエージェントが、自分が感じていた懸念と同じところを指摘してくれることがあって、「やっぱり、自分の考えは正しかった」と確認にもなりました。AIが自信をつけてくれる感覚です。一方で、自分では気づかなかった見落としを指摘されることもある。経験やスキルを問わず一定の品質を担保できるようになることが、チーム全体の底上げにつながっていると思います。

藤木(KDDI) 当初は「開発工程の精度向上と手戻り削減」を期待していたのですが、実際にはそれだけではありませんでした。バックログの質が上がることで、チーム内外の議論の質が変わりました。効果が大きかったのが企画部門と開発部門の間です。AIエージェントが「エンジニアが気にしそうなこと」を先に出しておいてくれるので、企画担当者とエンジニアが要件について話し合う場合にも、論点が明確で、むしろ「どうすれば、もっと価値の高い機能にできるか」みたいな議論が生まれるようになりました。AIは個人の作業を効率化するものとして注目されがちですが、EBAADを利用したAIエージェントは、チームや組織の効率化に寄与すると感じています。

Graatとの協働 ── 「壁打ち」から生まれた思想の共鳴

Graatとの取り組みの中で、特に印象に残っていることはありますか?
対談風景

藤木(KDDI) 毎週の壁打ちセッションが非常に助かっています。技術的な質問であっても、組織的な質問であっても、単純に答えが返ってくるだけではなく「どのように考えるべきか」「KDDIとして、どう捉えるべきか」というところから一緒に考えてくれます。AIについていえば、かなり前から「個人のAI活用から、組織のAI活用に向かうべき」ということを話されていました。今になってみれば、まさに、世の中がそのようになっていると思います。

本橋(KDDI) 最新技術に詳しいだけでなく、「業務にどう落とし込むか」という視点を常に持って話してくださるのがありがたいです。RAGが出てきた時期、ローカルLLMに注目していた時期など、「どこで使うのが適切か」「どう棲み分けるか」を一緒に整理してもらえたことが、自分たちの判断軸を作るうえで大きな助けになりました。

鈴木(Graat) Graatとしては「技術で何ができるか」という話と「組織として活用できるか」という話をセットで考えることを大切にしています。EBAADも、AIエージェントの設計を通じて「組織の力を引き出す」ことを目指しています。
藤木さんたちのチームと向き合う中で、逆に私たちが学ぶことも多いです。議論しながら、一緒に作ってきたからこそ、お互いに気づき合える関係になれたと感じています。

今後の展望 ── 「作ること」から「なぜ・なにを作るか」へ

今後、どのような方向に取り組みを発展させていきたいですか?

藤木(KDDI) AIによってコーディングは効率的になりました。だからこそ、「意思決定に人のリソースを集中させる」ことを意識しています。KDDIとして「なぜ、なにを作るか」という問いこそが重要です。エンジニアが、そこに集中できる環境をつくっていきたいですね。

KDDI 打田様

打田(KDDI) AIは「自分を成長させてくれる存在」として前向きに捉えています。わからないことをAIに聞ける環境は、若手エンジニアにとってむしろチャンスだと思っています。「AIを使って仕事をする経験」自体が、今後のキャリアにとって強みになるのではないかと考えています。

本橋(KDDI) 組織全体へのAI普及はまだ道半ばです。ただ、先に動くメンバーが良い事例や環境を作れば、それに引っ張られる形でチームが変わっていく手応えも感じています。Graatさんには、技術トレンドの変化を一緒に見ながら、誤った方向に進みそうなときに軌道修正してもらえる存在でいてほしいです。

鈴木(Graat) この取り組みは、Graat自身の思想を実地で試させていただいている場でもあります。EBAADで設計したいのは「人の仕事を代替するためのAI」でなく「組織や個人の成長を支援するAI」です。
その価値観がKDDIさんの現場で実現されてきていることは、私たちにとっても大きな学びです。これからも、お互いに刺激し合いながら進んでいきたいと思っています。

Graatへの期待

最後に、Graatへの今後の期待をお聞かせください。
対談風景

藤木(KDDI) 技術の最前線を追いながら、それを組織に根付かせる支援ができるのがGraatさんの強みだと感じています。
最新の知見を提供してもらうだけでなく、私たちとの取り組みの中でGraatさん自身の「次の強み」が生まれてくるような関係を続けていきたいです。

打田(KDDI) 今回、一緒に構築したAIエージェントは、ゼロから一緒に作っているからこそ、私たちの要望を機能に反映しやすい。
新しいニーズが生まれたとき、「本当に必要なものか」を一緒に問い直しながら改善していけるフローを、これからも続けていきたいです。

本橋(KDDI) AI技術は変化が速く、少し前の正解が半年後にはアンチパターンになっていることもあります。
組織を広げていく中で変な方向に進みそうになったとき、早めに気づかせてもらえる存在でいていただけると、非常に心強いです。

鈴木(Graat) ありがたいお言葉です。EBAADは、組織の変革を支援するためのAIエージェント設計方法論です。
今回はバックログ作成支援の話でしたが、au PAYチームでも次のAIエージェントを作ろうとしています。こうした取り組みをきっかけとして、コールセンターや店舗など、さまざまな業務向けにAIエージェントの適用ができればうれしいですね。

Graat Point 01
EBAAD(エバード)― 現場の知見を「組織能力」に変える、AIエージェントデザインサービス

Graatの提供するAIエージェントデザインサービス「EBAAD(エバード)」は、業務現場を巻き込みながら、AIを前提にした業務への変革と、AIそのもののデザインを同時に実行することで、組織として成果につながるAI導入支援サービスです。

EBAADでは、「熟練者や中核人材の判断軸や進め方」を AIを通じて組織全体で活かし続けられるようにする業務設計を重視しています。サービスデザインの視点から現状業務を整理し、関係者、業務の流れ、判断ポイント、属人化している箇所を可視化したうえで、AI・既存IT・人の役割を設計します。さらに、構想やPoCで終わらせず、現場を巻き込んだ検証を通じて、実務で機能する状態まで伴走します。