リレーブログ#03 なぜ会議は時間通りに終わらないのだろう?:オンラインミーティングをうまく進めるためのテクニック
Hyper-collaboration社とのリレーブログ、今回のテーマは「オンライン会議の時間管理」です。
前回エントリーでは、HYCの吉田さんが、オンライン会議でのコミュニケーションを円滑に進めるためのベース作りについて解説して下さっています。
これらは、会議実施前の素地づくりと言っても良いでしょう。
そこで、今回はオンライン会議中のふるまいと、会議実施後にすべきことについて、簡単なテクニックを紹介していきます。
オンライン会議中のテクニック:会議のゴールを宣言する
会議を時間内に終わらせるためには、極力「脱線」を減らすことが重要です。
そのためには、会議の冒頭で「会議の目的」「今日のゴール」を言葉にして共有することが有効です。
と、ここまでは、会議進行の「いろはのい」ですから、誰もがご存知でしょうし、実践している方も多いことと思います。
そんな使い古されたテクニックですが、次のような点に留意すると、大きな威力を発揮します。
言い回しの工夫:「私たち」が主語になるようにする
会議のゴール設定を行う際
「A製品の販促グッズ制作について方針を決定する」
のような表現を使うチームをよく見ます。
「方針を決定する」「合意する」などの、抽象度の高い「よそ行き」の言い回しは危険です。
こうした言い回しは、参加者を何となく「わかったような気分」にさせますが、その実、表面的な理解にとどまっていたり、「わかった」の中身が人によって違っていたり、ということが多いからです。
会議のゴールが抽象的だなと感じたら、次のような問いかけをしてみてください。
方針を決めたら(合意をしたら)次は何をする?
例えば
- (決めた方針に沿って)今後1ヶ月のアクションアイテムをリスト化する -(方針検討の過程ででた懸念事項について)関連部署と根回しのミーティングを行う
など、様々な答えが出てくることと思います。
この答えをうまく取り入れて「会議のゴール」を表現しましょう。
先ほどの例で言えば
「A製品の販促グッズ制作について方針を決定する」
ではなく
- 「A製品の販促グッズ制作について、1ヶ月のWBS作成に着手できる状態になる」
- 「A製品の販促グッズ制作について、事前に調整すべき課題と相手部署を明確にする」
などのように、会議参加者自身のアクションを想起できる言い回しにします。
こうした自分ごとのゴール設定ができていれば、参加者は、会議が目的地に向かって進んでいるかどうかをチェックしやすくなります。
見える化の工夫:全員の目に見えるところに書いておく
冒頭で会議のゴールを合意していても、議論が白熱したり、細部に入り込み過ぎると
「何で今この話をしてたんだっけ・・?」
という状態に陥ることがあります。
こんな時のために、会議のゴールは口頭で合意するだけでなく、必ず目に見える場所に書き出しておくことをお勧めします。
オンラインホワイトボードツールを利用できる環境であれば、対面の会議と同様に「今日のゴール」を目立つ付箋に書いてホワイトボードの左上など常に目に入る位置に配置しておくと良いでしょう。
視覚に訴えるツールを準備できない環境であっても、今日のゴールを文字にして書き出すことは有効です。
例えば、Confluenceの「ミーティング議事録」テンプレートには、「目標」という項目があらかじめ準備されていますので、こうした機能を使うのも一つの手です。
対面の会議とは異なり、ノンバーバルコミュニケーションによる意思疎通の促進が難しくなるオンライン会議においては、意識して視覚情報を増やすことが会議の効率化にもつながります。
デジタルツールをうまく活用し、今日のゴールを視覚で捉えながら議論を進めることで、会議が脇道に逸れてしまうのを防ぎましょう。
オンライン会議実施後のテクニック:会議のふりかえりを行う
「会議のゴールを設定する」と比較すると、こちらのテクニックは、あまり普及していないかもしれません。
しかし、チームの会議の進め方について、定期的なふりかえりを通じて改善していく取り組みは、会議運営のみならずチームづくりにとっても非常に役に立ちます。
特に、メンバーどうしが直接顔を合わせる機会の減ったリモートワーク環境においては、こうした業務案件外だが雑談でもない話をする場は、ますます重要になっています。
ただ、慣れないうちは「会議のふりかえり」と言われても、何を話せば良いか戸惑うかもしれません。
そこで、私がお勧めするのが、Procedural statementに焦点を絞ったふりかえりです。
会議に秩序をもたらす Procedural statement
Procedural statement、耳慣れない言葉ですね。
この用語は、元放送ジャーナリストで現在は映像コミュニケーション分野のコーチなどを務める Karin M. Reed氏が、近著『Suddenly Virtual』の中で使用している言葉です。
その意味するところは、議事進行を助けるような発言といったところでしょうか。
会議中の発言は、二種類に大別することができると、私は考えています。
一つは、議題そのものに関する発言です。意見表明、異論、質問など会議の本体部分とも言える発言です。
もう一つは、議題そのものには言及せず、議事進行を助けるような発言で、こちらがProcedural statement にあたります。
例えば、以下のような発言です。
- 色々な意見が出て今すぐ結論は出そうにないので、この議論は一旦保留とし、先に別のアジェンダについて話しませんか?
- あと15分で会議終了時刻になるので、そろそろまとめに入りましょう。
Procedural statementは、論点を整理したり、議論すべきポイントの優先順位を提案するなど、参加者にとって「見通しの良い」状態を作り出し、秩序だった議論を助けます。
カオスに陥る会議を観察すると、ほぼ例外なくProcedural statement が不足しています。
逆に言えば、会議をうまくコントロールして時間内に納めるためには、Procedural statement を適切に使うことが必要不可欠なのです。
「会議のふりかえり」入門編
定期的に「会議のふりかえり」を開催してみるなら、まずは
- チームの会議に対するメンバーの満足度
- Procedural statementをうまく使えているか
この二点を中心にふりかえりのアジェンダを設計してみると進めやすいと思います。
例えば、こんなアジェンダ設計です。
- チームの会議に対する満足度評価(ファイブフィンガー)
- Procedural statementをうまく使えているか自己評価(ファイブフィンガー)
- KPT
- NextAction決定
トータル40〜45分程度のふりかえりを、3ヶ月に一度くらいのサイクルで実施すると良いでしょう。
最後に、会議のふりかえりに活用できるConfluenceのテンプレートを紹介します。
「ふりかえり」テンプレートは、スクラムのスプリントレトロスペクティブを想定した一般的な項目から構成されているため、今回は「会議のふりかえり」用にカスタマイズした例です。
ちなみ、こちらがデフォルト設定のままの「ふりかえり」テンプレートです。
テンプレートをカスタマイズし、定型化されたアジェンダを埋め込んでおくことで、3ヶ月に一度と開催サイクルが長めのふりかえりであっても、安定して実施することができます。
さて、今回は会議を時間通りに終わらせるためのテクニックを2つご紹介しました。
次回と次々回は「リモートワークにおける情報共有から情報処理へ」というテーマを扱います。
リモートワークの常態化により、メンバー間の会話がテキストベースに移行しているチームも多いことと思います。
こうした環境下では、「一過性の共有で事足りる情報」と「恒久的に蓄積しておくべき情報」の腑分けが、ますます重要になります。
チームの扱う情報を整理するためのヒントについて、まずはHYC吉田さんが、続いてGraat浅木が執筆予定ですので、ぜひチェックしてみてください!