リレーブログ#05 テレワークでの情報共有:フロー、ストック、そしてリモート

3か月前
浅木 麗子
執行役員
浅木 麗子

私たちGraatは、お客様の業務プロセスの改善やチームビルディングを支援することが多くあります。そうしたシーンで、非常に良く聞くお悩みが

  • チームの情報共有がうまく行ってない
  • 仕事が属人化している

というものです。

この悩みを解決するアプローチとして、フロー型情報とストック型情報の線引きが、たいへん重要な意味を持っていると、私は思います。

そして、フロー型情報とストック型情報の線引きにおいて、昨今のリモートワークの広がりが果たす役割には、無視できないものがあります。

以下、順を追って解説していきます。

ドキュメント管理では解決できないこと

多くのチームが、情報共有の促進や属人化の解消のためにドキュメント管理ツールの導入と運用に関するコンサルティングを所望されます。
しかし、ドキュメント管理を改善するだけでは、チームの抱える課題を根本的に解決できないケースが、多々あります。

ドキュメント管理の改善は、ひとことで言うと「ストック型の情報を見つけやすく、利用しやすくする」ことです。
一方で、情報共有や属人化という課題の本質は、多くの場合ストック情報とフロー情報の線引きにあります。

ストック情報とフロー情報の線引きとは、チームの扱う情報のうち、その場限りで消えて構わないもの(フロー)が何で、永続化して何度も参照したいもの(ストック)が何かの区分けです。

仕事の属人化や情報共有の不全といったチームの課題は、この区分けがうまくいっておらず、本当に重要な情報が適切に永続化されていないことによって発生する場合が多いのです。

したがって、ストック型情報のアクセシビリティを改善するだけでは、部分的な解決にしかならないということです。

むしろ、情報共有の問題を抱えるチームが最初に取り組むべきことは、ストックとフローの境界を定義し、消えては困る情報を適切にストックに移すことである場合がほとんどです。

フローとストックの線引きを決めるもの

このとき、考えるべきポイントは以下の2つです。

  1. 何がフローで、何がストックなのか
  2. フロー情報をストックへ移すタイミングはいつが良いか

1つ目は言わずもかなですが、意外に重要なのが2つ目の視点です。

新しいモノやサービスを生み出す仕事においては、フロー型の情報としてやり取りされたものが、時間の経過とともにストック型に変容することがあります。

たとえば、アジャイル開発を実践しているプロダクトチームであれば、PBI(プロダクトバックログアイテム)のリファインメント過程や、場合によっては開発期間中に、作成物の詳細に関するQ&Aや細かな調整が行われることが多いでしょう。

これらは、いつの時点で「確定した仕様」に変わるのか?
これが、先ほど紹介した視点の2つ目です。

ソフトウェア開発以外のドメインであっても、ものごとが決定するまでに関係者間で複数回のやりとりが交わされることは、珍しくありません。

情報がどのタイミングで決定事項になるのか?ご自分のチームに当てはめて想像してみると、なかなかの難問であることに気づくのではないでしょうか?

リモートワークの普及が、フローとストックの線引きを容易にする

私は、昨今のリモートワークの広がりが、この難問の手ごわさを緩和する要素になり得ると考えています。

皆がオフィスに集まるオンサイトワークでは、フロー型の情報はおもにアナログ媒体(直接会話やメモなど)を通じてやりとりされていました。 リモートワーク環境では、メンバーどうしが顔を合わせることができないため、多くのチームで、日常的なコミュニケーションがチャットツールなどのデジタル化されたテキストベースに移行しています。

これを概念図にしたものが下の画像です。

働き方の変化.png

ここで着目していただきたいのが、フロー型情報のやりとりにおけるアナログとデジタルの逆転現象です。
直接の会話であれば、その場でメモを取るなりしておかない限り消えてしまっていたフローの情報が、デジタル化により、テキストデータとして記録され、後から検索することもできるようになります。

この結果、「情報をいつストックに移すか」の判断は、先送り可能なものになります。
その場で食べないと溶けてしまうアイスクリームが、保冷容器の登場によって一定時間は持ち運べるようになったようなもの、と言えば、わかりやすいでしょうか。

そして、このことは同時に「何がフローで、何がストックなのか」の判断を容易にする効果も生み出します。
チームの情報について「何がフローで、何がストックですか?」と聞かれ、スラスラと答えられる方はめったにいないと思います。
一方で、特定の情報を取り上げ「これはストックすべき内容ですか?」と問われれば、ずいぶんと答えやすくなるでしょう。

デジタル化されたフロー情報の活用

このように、フロー情報のデジタル化は、チームの情報整理に画期的と言ってよい意味をもたらします。

私の知る限りでも、チャットツールのログを使って、以下のような取り組みをしているチームがあります。

  • スクラムチームの取り組み:スプリント期間中にやりとりされたQ&Aを分析し、プロダクトバックログアイテムのReadyの定義に反映させる
  • 管理部門の取り組み:Slackで引用される回数の多いポストを分析し、業務マニュアル化する

ここまで手間暇をかけた分析が難しくとも、たとえば、チーム内で「最近Slackで検索したこと」というアンケートを取り、結果をもとにストックへ移行すべき情報を識別する、などの簡易的なアプローチも考えられると思います。

リモートワークの常態化による直接対話の減少は、チームの情報共有に様々な問題を生じさせています。
一方で、本エントリーで述べてきたようなプラス側面も併せ持っています。
あなたのチームでも、現在の状況を奇貨ととらえ、チームの情報を整理する試みに取り組んでみてはいかがでしょうか?

リレーブログの次回は、HYCの吉田さんが「チームワークと分業」について書いてくださる予定です。
お楽しみに!

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