アジャイルコーチがティーチングで注意している5つのポイント

2年以上前
斎藤 紀彦
アジャイルコーチ
斎藤 紀彦

はじめに

Graatにジョインし、アジャイルコーチを名乗り早2年半が経過しました。
最近では、自身のノウハウを同僚や後輩に伝える機会も少しずつ増えてきました。
そこで、アジャイルコーチを目指す方へのヒントとして、また、ベテランコーチからのフィードバックを得られるきっかけになればと思い、ノウハウをブログとしても公開したいと思います。

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今回はアジャイルコーチとしてティーチングで注意している5つのポイントをまとめます。

ティーチングで注意している5つのポイント

  1. 絵やメタファーを活用して簡潔に伝える
  2. 「なぜ」を伝える
  3. 体験させる
  4. 経験を共有する
  5. 自己学習を促す

1. 絵やメタファーを活用して簡潔に伝える

ティーチングでは内容を絞り、簡潔に伝える必要があります。

コーチに与えられる時間はとても短く、長くても10分、一言しか伝えられないことも珍しくありません。
さらに、欲張ってあれもこれもティーチングしようとすると、チームがうんざりし、最悪の場合は一切聞く耳を持ってもらえなくなります。

そのため、私は指摘事項の中で本当に伝えるべきことは何かをしっかり考え、優先順位をつけてから、絵やメタファーなどを活用しできるだけ短く簡潔に伝えられる工夫をしてティーチングに臨みます。

※「モブプログラミングをオブサーブしてフィードバックを伝えた際に使った図の例」 モブプログラミング説明.jpg

2. 「なぜ(WHY)」を伝える

アジャイルプラクティスの「やり方(HOW)」のみを伝えチームに命令すると、コーチは一瞬で嫌われます。
たとえば見積。
以前、見積を作るのに「正確さを追求しどれだけ長い時間を掛けても良い」としてきた従来型開発チームに、プランニングポーカーのやり方だけを伝えてしまい、「こんな雑な見積で大丈夫なのか」と反発や混乱を招くことが何回かありました。

そこで、チームがはじめて見積をする際には説明に時間を割き、アジャイルにおける見積やプラクティスの「なぜ(WHY)」を丁寧に説明するように心掛けています。

  • アジャイルにおける見積の目的
  • なぜ相対見積なのか?
  • なぜチームメンバー全員で見積するのか?
  • なぜ時間を短くするのか?
  • なぜフィボナッチ数を利用するのか?

3. 体験させる

ティーチングの内容をチームに納得してもらうには、言葉だけで説明するよりも、まずは体験です。

以前、タイムボックスの重要性を繰り返し伝えたものの、一向にイベントの時間通りに終わらせる意識が見えないチームがありました。

ある時、チームメンバーが上司向けのリファクタリングの説明スライドを作成していたのですが、いくら待っても成果物が上がってきません。

そこで、このような提案をしてみました。

「上司へのプレゼンは5分後になりました。5分で作りましょう!」

タイムボックスを区切り、とりあえず骨子だけなら5分でまとまるはずだと踏んだのです。

チームは集中し、5分間の中で上司に伝えたいメッセージを見事に要約しました。

その後もチーム自身がタイムボックスで集中するメリットを感じたためか、イベントでもタイムボックスを守る意識の向上が見られました。

このように、言葉を尽くして説明するよりも、まずは体験させて自ら気づきを促す方が効果的なケースがよくあります。

また、「コイン渡しゲーム」や「自己組織化ゲーム」など、アジャイルの要素をゲームを通して体で学習するためのゲームが様々あるので、このようなゲームを活用するのもオススメです。
(興味がある方は検索してみてください)

4. 経験を共有する

どんなに小さなものでも自らの経験に勝るものはありません。
これまで、誰かの言葉を借りているだけでティーチングをしても、チームに響いていないと感じることがよくありました。

そこで、チームのティーチングにはなるべく経験を盛り込むようにしています。

伝えるべき経験とは「成功体験」に限りません。

私はよく、プラクティスをルール通りに実施しなかった際の失敗談を伝え、プラクティスをルール通りに実施する重要性をチームに伝えています。

  • デイリースクラムを60分間実施したことで、チームは仲良くなったものの、他チームやマネジメントの信頼を低下させた
  • リファクタリングを実施しなかったことで、長期的なアジリティを低下させた

5. 自己学習を促す

アジャイルの知識はとても広範囲に渡るため、アジャイルコーチだけで伝えるには限界があります。
ある程度ポイントを伝えたら、チームメンバーがアジャイルの要素を自己学習するよう促しましょう

チームにもっと学びたいという思いを起こさせるには、まずはコーチがアジャイルについて情熱を持って語ることが重要です。その上で、チームにアジャイルによる成功体験を積み重ねてもらうと効果的でしょう。

現在支援しているチームは、以下のような様々な自己学習に取り組んでいます。

  • Learning Session
  • 『大規模スクラム Large-Scale Scrum(LeSS)』読書会
  • 『Clean Architecture 達人に学ぶソフトウェアの構造と設計』読書会
  • 「スクラムガイド」読み合わせ会

おわりに

今回は、アジャイルコーチとしてティーチングの際に注意しているポイントを説明してきました。
いかがでしたでしょうか!?
是非、皆様の意見もフィードバックしていただければ幸いです。

Graatではアジャイルコーチを募集しています!
興味ある方は、以下フォームからエントリをお願いします!

https://www.graat.co.jp/recruit/agile-coach

参考文献

  • Rachel Davies, Liz Sedley(2017). アジャイルコーチング オーム社
  • Zuzana Sochova(2020). SCRUMMASTER THE BOOK 優れたスクラムマスターになるための極意――メタスキル、学習、心理、リーダーシップ 翔泳社
  • Adkins Lyssa(2010). Coaching Agile Teams: A Companion for ScrumMasters, Agile Coaches, and Project Managers in Transition Addison-Wesley Professional
  • agile42 Coaches(2017). The Hitchhiker's Guide to Agile Coaching agile42 International
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