日立建機様との対話から見えた、変化に向き合うための実践 ― Agile X Conference に集った企業の取り組みから ―

31分前
Graat セミナー事務局
Graat セミナー事務局

2025年12月9日(火)に開催された第2回 Agile X Conference において、 日立建機株式会社と Graat による対話セッションが行われました。

本記事では、この対話セッションを軸に、 日立建機様がこれまでどのように変化と向き合い、 実践を積み重ねてきたのか、その背景にある考え方をご紹介します。

Agile X Conference
https://agile-x-conference.com/

オープニングトーク ― この場が目指しているもの

オープニングトーク JACKの説明

JACKのこれまでの取り組みと現在地

オープニングトークでは、JACK(Japan Agile Collaboration Kernel)が これまで大切にしてきた考え方と、現在の立ち位置について共有が行われました。
JACKは、複数の企業が関わりながら、対話を軸に学びや気づきを持ち帰る場として 活動を続けています。

Agile X Conference は、業界を越えて大規模な事業会社が集い、 それぞれの実践や課題を持ち寄って対話を行うイベントです。 完成された答えを提示するのではなく、対話を重ねながら考え続ける姿勢そのものを大切にする点が、 この場の特徴として語られていました。

対話セッション ― 日立建機様の実践から

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日立建機におけるアジャイルの取り組み

本セッションでは、
日立建機株式会社 グローバル営業本部 DNA開発推進部長の 猪瀬 聡志 様と、
弊社 代表取締役社長の 鈴木 雄介が登壇し、
日立建機様の実践について対話が行われました。

日立建機株式会社 猪瀬様 Graat 鈴木雄介

写真1:日立建機株式会社 猪瀬 聡志 様/写真2:Graat 鈴木雄介

登壇者紹介と取り組みの背景

猪瀬様は機械工学(内燃機関)を専攻され、30年以上にわたり実務の現場に携わってこられた方です。 IT畑の出身ではなく、営業や代理店支援、グローバル展開といった事業の最前線で 経験を積み重ねてきた立場から、現在の取り組みが紹介されていました。

猪瀬様と日立建機のご紹介

日立建機様は、売上収益約1.37兆円、海外売上比率84%という、グローバルに事業を展開する企業です。 建設機械は長期間にわたり過酷な環境で使われるため、機械トラブルは現場の停止や顧客の損失に直結します。 そのため、サービス品質やサポート体制は、新車購入時の重要な判断材料のひとつになっています。

こうした事業環境を背景に、日立建機様では、 自社の立ち位置や価値提供のあり方が、改めて明確になりました。

新社名とLANDCROSのご紹介

その具体的な表れとして、2027年4月からは社名を「ランドクロス株式会社」へ変更し、 「Solutions Beyond Machinery」というメッセージのもと、 機械そのものにとどまらない価値提供を目指していく方針が示されています。

あわせて、本取り組みを支える中核として紹介されたのが、
日立建機様が提供するデジタルサービス「LANDCROS Connect」です。
建設機械の稼働状況や各種データを収集・可視化し、自社製に限らず他社製の建機も含めて 一元的に管理できる点が、サービスの特長として語られました。

LANDCROS Connect では、こうした現場特有のリスクを前提に、現場や代理店、 グローバル拠点と情報を共有することで、サービス品質の向上や意思決定の迅速化に つなげていくことを目指しています。

本セッションで語られたクラウドネイティブへの転換や改善を重ねやすいシステム構成の話も、 この LANDCROS Connect を支える取り組みの一環として位置づけられていました。

こうした事業環境やプロダクト特性を背景に、現場での試行錯誤がどのように進められてきたのか。
この後、猪瀬様と鈴木の対話の中で、その具体的なプロセスが整理されていきます。

クラウドネイティブへの転換という気づき

セッションの冒頭では、日立建機様が直面してきたシステム構成上の課題が共有されていました。 基幹システムと周辺システムが密に結びついた状態では、変更の影響範囲が読みにくく、 テスト工数の増大やリリースの遅れにつながっていたといいます。

そこで着目されたのが、APIを介した疎結合な構成への転換でした。

基幹システムに直接手を入れるのではなく、段階的に周辺から切り離していくことで、 変更に強く、改善を重ねやすい状態を目指していく――
いわゆるストラングラーパターンの考え方です。

この考え方に触れるきっかけとなったのが、2021年10月に行われた 弊社 鈴木の講演でした。

ストラングラーパターン

講演の中で紹介された「ストラングラーパターン」の話を通じて、 単なる手法としてではなく、自身の置かれた状況に照らして捉え直すことができたと、
猪瀬様は振り返られていました。

そうした気づきをきっかけに、ストラングラーパターンの考え方に強く共感し、 このアプローチを採る判断につながったといいます。

また、この取り組みは単なる技術刷新ではなく「最初にすべてを決め切る」のではないという、 「使いながら学び、調整を重ねていく」考え方への転換でもありました。 事業の変化に追随できる土台をつくることが、ここでの重要なポイントとして位置づけられています。

立ち止まった経験と、対話への立ち返り

プロジェクトリリースのスピード

取り組みが進む一方で、プロダクトのリリース速度が一時的に低下した時期もありました。
当時はコロナ禍の影響により全員がフルリモートで開発を進めており、 形式上はアジャイルな進め方をしていたものの、 ビジネス側と開発側の間で十分な対話が取れていない状態に陥っていたといいます。

方法論やツールの導入は進んでいた一方で、 「なぜそれをやるのか」「何を良くしたいのか」といった前提が共有されていなかったことに、 後になって気づいたと猪瀬様は語られていました。

そうした状況を受けて立ち返ったのが、アジャイルマニフェストの原点です。

アジャイル道場の実践

英語の原文を読み直し、「個人と対話」を重視するという本来の価値に向き合う中で、 スクラムを回すこと自体を目的にするのではなく、 まずは話し合い、理解を揃えることを優先する。
その積み重ねが、再び前に進むための足がかりになったと受け止められていました。

こうした取り組みの中では、Graatからの助言も重要であったと話されていました。
Graatからは、単に「手法ではこうすべき」ということではなく、 現場やチームの状況を踏まえながら、実践的なノウハウが提示されました。
その結果、自分たちの現状を理解しながら、次に試す一歩を整理することができたそうです。

対話がもたらしたチームと組織の変化

本セッションの中で、猪瀬様は、対話を重ねることを意識するようになってから、 チームや組織の関係性に変化が表れていった点にも触れられていました。
立場や役割を越えて意見を交わす機会が多くなり「横のつながり」で物事を考える場面が、 次第に増えていった様子がうかがえます。

レンガ職人の話

その文脈で紹介されたのが、「レンガ職人の話」でした。
自分たちが何のために取り組んでいるのか、その仕事がどのような価値につながっているのかを 言葉にして共有することで、視点が作業単位からビジネス全体へと広がっていった ―― というエピソードです。

こうした対話の積み重ねを通じて、相手の立場や背景への理解が深まり、 互いを尊重しながら意見を交わす土壌が育っていった様子が印象的でした。
また、共通の言葉やメンバーの認識が揃うことで議論が整理され、 拠点や国を越えたやり取りでも、前向きな変化が生まれたと紹介されています。

実践を通して見えてきたこと

一連の取り組みを通して、日立建機様の中では、変化に向き合うための手応えが 少しずつ積み重なっていった過程が示されました。

アジャイルの「方法」ではなく「効果」を

このセッション全体を通して、スクラムやアジャイルといった手法そのものよりも、 「変化に対応し続けられる状態をどうつくるか」が重視されている点が浮かび上がってきます。

チームに権限を委ね、対話を重ねながら進めていくことで、メンバーの一人ひとりが 自分たちの仕事を、事業とのつながりの中で捉えられるようになった点についても言及されました。
その結果として、主体性や責任感が育ち、組織としての学習や試行錯誤が回り始めていったことが 読み取れます。

また、グローバルな関係者を巻き込みながら改善を重ねていく中で、 それぞれの状況に即した進め方が形づくられてきたことも、実践の成果として共有されていました。

こうした取り組みの中で Graatは、特定の手法や正解を提示する立場ではなく、 日立建機様が自分たちの状況を言葉にしながら、次に試す一歩を整理していくための対話に伴走してきました。

対話セッションのまとめ

握手をする猪瀬様と鈴木

この対話セッションでは、日立建機様の取り組みを通じて、変化の大きい環境の中で、 いかに試行錯誤を重ねてきたのか、その実践のプロセスが共有されました。
技術や手法の導入そのものではなく「対話を重ねながら状況に応じた進め方を模索し続ける姿勢」が、 取り組み全体を支えていたことが印象的です。

また、立ち止まる経験や、対話に立ち返る過程も率直に語られたことで、 変革は一直線に進むものではなく、現場で考え続けることの積み重ねであるという点が、 より具体的に伝わってきました。

こうした実践の共有を受けて、後半のパネルディスカッションでは、 各社がそれぞれの立場から、変革に向き合う視点を言葉にしていきました。

パネルディスカッション ― 対話の延長線上で

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登壇者:各社 代表取締役社長(左から順に)

  • グロース・アーキテクチャ&チームス株式会社 鈴木 雄介氏
  • KDDIアジャイル開発センター株式会社  木暮 圭一 氏
  • 株式会社永和システムマネジメント 平鍋 健児 氏
  • 株式会社レッドジャーニー 市谷 聡啓 氏
  • クリエーションライン株式会社  安田 忠弘 氏

アンケート結果を起点としたふりかえり

アンケート結果を受けてのコメント アンケート結果を受けてのコメント

後半のパネルディスカッションでは、5社の登壇者がそれぞれの立場から、 組織変革やアジャイルの実践に向き合う視点を共有しました。

対話セッションを受けた会場アンケートでは、「目的と手段」「顧客・チームファースト」 「ビジョンの力」といったキーワードが、参加者の関心として浮かび上がっています。

特定の手法やフレームワークではなく、現場で何をよりどころに判断し、 進めていくのかという点に、多くの共感が集まっていた様子が見て取れます。

また、大企業ならではの組織構造や制約の中で、どのようにコミュニケーションを設計し、 変化を継続させていくのかといったテーマも、各社の実体験を交えながら語られていました。

対話セッションで示された実践を起点に、より広い視点から
「変革と向き合うための考え方」が共有された時間となりました。

企業ブースとアンカンファレンス

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Graatのブースでは、エンタープライズ環境におけるアジャイルを実践するにあたり、 直面しやすい課題領域についての資料配布や、これまでの支援事例をご紹介いたしました。

日立建機 猪瀬様と Graat鈴木

当日は、セッション内容を受けて足を止めてくださる方も多く、 登壇内容や日頃の取り組みをきっかけに、具体的な課題感について 意見を交わす場面が随所で見られました。

アンカンファレンスの様子

また、会場後方ではグラフィックレコーディングを囲む形でアンカンファレンスが行われ、 参加者同士が立場や役割を越えて対話を深める姿が印象的でした。

ブースへ立ち寄ってくださった皆様と直接お話しできたことは、 私たちにとっても大変貴重な機会となりました。
改めて、足を運んでいただいた皆様に、スタッフ一同心より感謝申し上げます。

おわりに

第2回 Agile X Conference では、複数の企業による対話セッションをはじめ、 パネルディスカッションやアンカンファレンスを通じて、 「変化と向き合うための視点」が会場全体に共有されていました。
本記事では、その中でも日立建機様との対話セッションを軸に、当日のやり取りを振り返っています。

それぞれのセッションでは、特定の手法や正解を示すのではなく、 各社が自らの文脈に引き寄せながら試行錯誤してきた実践が紹介されました。 参加者が自分たちの現場に重ねて考えるための材料が丁寧に提示され、 セッションでの言葉が、その後の会場内での対話や問いへとつながっていく様子からは 本イベントならではの価値がうかがえます。

Graatとしても、こうした場づくりに関わり、 皆様と直接言葉を交わせたことを大変ありがたく感じております。 Agile X Conference で得られた気づきが、それぞれの現場での次の一歩につながれば幸いです。

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イベントの締めは Agile X(クロス)のポーズで。

 


参考リンク

Agile X Conference
https://agile-x-conference.com/

JACK(Japan Agile Collaboration Kernel)
https://japan-agile.org/

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