協力会社社員の「モチベーションが低い」問題について
はじめに
大企業や非IT系企業がアジャイル開発に取り組む際、自社のメンバーだけで"内製"することはなかなか難しいのが現実です。 そこで、ビジネスパートナーやシステム子会社など(以下協力会社)と自社社員(以下プロパー)と混成アジャイルチームを構成するケースが多くあります。
その際、よくプロパーの管理職から、
- 「協力会社社員のモチベーションが低い」
- 「受け身の姿勢で、言われたことしかやらない」
という悩みがよく寄せられます。
プロパー社員と協力会社社員の姿勢の温度差は、一見大きな問題ではないように見えます。
ですが、このようなケースでは「関係各所との調整」「複雑な仕事」「重要な意思決定」がプロパーに委ねられ、結果、プロパーがボトルネックとなり、チームであることのメリットが活かせず、開発が停滞する現場を多く見てきました。
今回は、この悩みと解決の方向性について述べていきたいと思います。
プロパーと協力会社社員の温度差は「必然」
このテーマを考える際には、プロパーと協力会社社員の温度差は「必然」であることを認識する必要があります。
まず、プロパーにとって開発対象物は自分事ですが、協力会社社員にとっては他社のサービスであり、プロパーと同様の関心を向けることは難しいです(これはプロパーは「産みの親」に、協力会社社員は「保育士」と例えられます)。
また、協力会社社員は契約終了のリスクと不安を抱えています。
さらに、協力会社社員はプロパーと待遇も異なります。
これらの動かし難い要因により、協力会社社員のモチベーションはプロパーよりも低い傾向になります。そのため、プロパーが積極的に協力会社社員をモチベートする必要があります。
協力会社社員のモチベート方法
ここからは私自身の経験に基づき、具体的なモチベート方法を述べていきます。
ポイントは以下3点です。
- 対等な立場で仕事を進める環境をつくる
- 期待を明確化する
- ユーザーや顧客に意識を向かわせる
1. 対等な立場で仕事を進められる環境をつくる
はじめに、以下のような取り組みでなるべくプロパーと協力会社社員が対等な立場で仕事を進められる環境をつくることがポイントになります。
- 「苗字や名前」+さん付けで呼ぶ(「君」、「ちゃん」、「派遣さん」はNG)
- スクラムイベントを始めとするミーティングに出席してもらう
- ミーティングでの席順を意識させない
- ミーティングでの自由な発言を促進する
- 可能な限り学習機会を与える
- 可能な限り本人の意欲を尊重した配属にする
2. 期待を明確化する
また、以下のように協力会社社員に期待を明確に伝える、ということもポイントです。
多くの協力会社社員にとって、アジャイル開発では今までと根本的に異なる役割が求められるため、期待を明確に伝えないと協力会社社員に「なぜこんなことをやらされるのだろうか」「どこまで言っていいのだろうか」という疑念や遠慮が生まれ、その後のコミュニケーションの障害になります。
- プロパーにも遠慮せず意見してほしいこと
- チームで仕事の進め方を考えてほしいこと
- チームで進捗管理してほしいこと
- 関係各所との調整を実施してほしいこと
- 改善策を提案してほしいこと
- サービスのアイディアを提案してほしいこと
3. ユーザーや顧客に意識を向かわせる
この問題を解決するため最も重要なことは、チームメンバーの意識を、立場や待遇よりもなるべくユーザーや顧客に向かわせることです。
具体的には、以下のような取り組みを実施します。
- サービスのビジョンやフィーチャー(機能)の目的を伝える
- POと一緒にプロダクトバックログアイテムを作成する
- ユーザーインタビューやユーザーテストに同席や見学してもらう
- カスタマーサポートのタスクを実施してもらう
- KPIや計測結果を見える化する
おわりに
今回は、あまり取り上げられませんがエンタープライズアジャイルの現場で地味に根強く存在する「協力会社社員の「モチベーションが低い」問題」を取り上げました。
この記事で私が一番言いたいのは、「アジャイルチームを軌道に乗せるためには、協力会社社員をリソースではなく対等なチームメンバーとして扱う意識と覚悟を持ってください」ということです。
もしもこのような問題に直面していたら、契約会社との契約形態(準委任、派遣、一括請負)に注意しながら、是非試してみてください。
また、それでもうまくいかない場合は、Graatではプロパーと協力会社の混成チームも数多く経験してきたため、是非ご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!